昭和30年代以降に始まる、全国一律規格の工業製品の大量生産と大量消費という社会システムが今日のように広く一般に行き渡るほんの少し前の時代には、わたしたちの暮らしに欠かすことのできない様々な道具や身の回りの品々など日々の生活に必要なモノは、長らく地域に住まいする職人たちの手によってつくられてきました。
全国各地の職人たちは、自らのもつ技術を駆使して人々の要望に応え、地域の材料を用いてできるだけ使い易く、かつ長持ちする多様なモノをつくり続けてきました。
これら職人の手業
によってつくられたモノは、長い時間をかけて改良が加えられ、また不必要な部分が削ぎ落された結果、使い勝手が良く、端整な美しさをもっているものが多数みられます。いわば、こうしたモノには「用の美」が端的に表れています。
また、職人の手になるモノは、長く使うことを前提につくられているところから、壊れた場合は補修や繕いを加え、欠落した部分は別材で補うなど、必然的に「モノを大切にする社会」を技術の面で支えてきました。
しかし、近年急激な社会の変容による大幅な需要減に加えて、モノづくりの技術を伝えてきた職人の高齢化と職人の減少などにより、彼らが伝承してきた技術の存続そのものが危ぶまれています。
本展覧会では、こうした社会状況をふまえて、氷見の手仕事を紹介する第1回展としてまず5つの手仕事を取り上げ、実物資料を通して氷見のモノづくりとその歴史を紹介しました。
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