「窪の“くざんどん”」として知られる陸田(近世は「六田」と表記)家は、江戸時代から続く窪村(氷見市窪)の素封家です。当主は代々「九左衛門」を名乗ることが多く、盛時は「持高三千石」と称され、明治から昭和初期には代々窪村の村長をつとめました。
平成30年、この陸田家から当館に古文書や古書など約1万点近くの資料が寄贈され、現在整理作業を継続しているところです。今回の特別展は、これらのうち整理が一段落した古書について紹介しました。
陸田家の古書は、和書1014冊、漢籍200冊、合計1214冊から成ります。
主なものでは、江戸時代の『絵本太閤記』、『万葉拾穂抄』、大和・紀伊・木曽路・伊勢参宮の『名所図会』など、明治時代の『百科全書』、『日本外史』などの刊本があります。特に、明治9年に刊行された横浜の翻訳委員社中訳『新約聖書希伯来書』は、近代初期の日本語訳聖書として貴重なものです。
また陸田家当主の手になる神道、歴史、書道などの写本が多数あります。さらに、「応響雑記」の作者として知られる田中屋権右衛門の手になる国文・諸芸などの写本も発見されました。刊本や写本には、「応響雑記」に引用されている書籍もあり、権右衛門の旧蔵品として注目されるものです。
陸田家の古書は、宗教、言語、文学、歴史地理、政治経済、教育、理学、芸術など各分野にわたるものであり、いわば「小さな図書館」であるといえるでしょう。
|