伝統的な菓子は嗜好品でありながら、日本の季節や年中行事と深く結びついたり、地域や、人々のつながりの中でその場に応じて添えられたりしてきたことで、その存在が地域文化の継承に重要な役割を果たしています。
氷見には「田やすみ」や「祭り」などのいわゆる「ハレの日」に各家が「笹餅」や「小麦団子」などをつくったり、チョーハイ戻りの土産や男女の節句、煎り菓子盆など季節ごとに婚家へのつけ届として、嫁の実家が餅類や饅頭、菓子を準備したりする風習がありました。
また、一方で江戸時代には加賀藩領であった氷見市では、冠婚葬祭や祭礼の折に用いられる練切や落雁でつくられる式菓子などに、加賀藩の菓子文化から影響が見られることが指摘されています。
こうした季節や年中行事ごとに菓子をつくる文化は、行事や風習自体が廃れていくことで数を減らし、現在では行われなくなっているものもあります。同様に、式菓子をつくる菓子屋も、生活習慣の変化や、洋菓子の需要増、大手チェーンの市場参入などの影響で数が減少し、冠婚葬祭や祭礼の際に伝統的な式菓子を用いる機会自体も少なくなっています。
今回の特別展では、かつて市内で営業していた角屋、中勢松月堂、森甘泉堂の三点から寄贈をされた菓子木型や菓子用の調理道具など菓子職人の道具を中心に展示を行いました。その展示を通して、年中行事や風習と深く結びついていた菓子文化と、加賀藩の影響を受けた菓子文化という2つの観点から氷見の菓子文化を紹介しました。
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