鳥獣被害を防ぐために私たちにできること Vol.7

更新日:2021年11月17日

二番穂がイノシシを引き寄せる

9月になり、稲刈りの忙しい時期だと思います。稲刈りが終わった人は、今年もようやくイノシシ対策が一段落したと思っていることでしょう。しかし、刈取り後の水田がイノシシ対策の盲点になっていることは、あまり知られていません。稲刈り後の対策をしっかり行うことで、来年以降の被害を減らすことができます。今回は、稲刈り後の対策について紹介します。

ヒコバエはイノシシの餌

稲刈り後の切り株からもう一度生えて穂を出し、米を実らせる2番穂のことをヒコバエと言います。実は、ヒコバエに実った米がイノシシの餌となり、被害を助長する大きな原因となっています。

自分の田んぼに生えたヒコバエの米をイノシシに食べられて、それを被害だと思う人は少ないでしょう。しかし、イノシシにとって冬を乗り切るために沢山食べなければならない10月〜11月に、山の中で長時間餌を探さなくても田んぼに出てきてヒコバエを食べれば、人間に怒られることもなく短時間でお腹いっぱいになれます。これを知ったイノシシは、集落を餌場だと学習し、集落の周辺を生活拠点にするようになり、農作物被害がどんどん酷くなっていきます。

ヒコバエの米なんて大した量じゃないと思っている人もいるでしょうが、滋賀県の調査では、滋賀県内の寒い地域でも1反あたり約50kgの米が取れることがわかっています。この量の米があれば、大人のイノシシを十分に養えることができるでしょう。さらに、夏にはまだ穂を食べなかったウリボウも母親の真似をしてヒコバエを食べて米の味を覚え、翌年は収穫する米に被害を出すようになってしまいます。

ヒコバエを無くす方法の1つとして、秋耕をしてヒコバエを埋没させることをお勧めします。秋耕を行う時期は、極早稲種ではより早くなる等、品種、気候等により変わるので、最低限、ヒコバエから穂が出る前に耕すことを目安にしてください。また、秋耕はイノシシ対策だけではなく、ワラを土に埋没することにより良質の土を作ります。土作りも併せて行うには、気温が高くワラが分解しやすい10月中旬までに行うことをお勧めします。

ヒコバエの管理は、集落全体で行うことにより効果が上がります。自分の田んぼにヒコバエが沢山生えていることを恥ずかしいと思えるようになった集落ではイノシシ被害が減っていくでしょう。

収穫後の電気柵の管理

田んぼや畑に設置した電気柵は、収穫後も電気を流し続けるか速やかに撤去しましょう。なぜなら、電気を流さないで電線を張ったままにしておくと、イノシシが電線に触れても何も起こらないことを学習してしまい、電線を触らなくなるからです。こうなってしまうと、次に通電した時にも電線に触れなくなり、イノシシに電気ショックを与えられません。電気柵の効果を持続させるために、電気柵の管理は収穫後もしっかりと行ってください。

ヒコバエが生えた田んぼ

【ヒコバエが生えた田んぼ】

ヒコバエを食べて籾殻が大量に入った糞

【ヒコバエを食べて籾殻が大量に入った糞】

冬場に放置された電気柵と侵入したイノシシの掘り跡

【冬場に放置された電気柵と侵入したイノシシの掘り跡】

西日本農業研究センター 堂山 宗一郎

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