鳥獣被害を防ぐために私たちにできることVol.11

更新日:2020年03月27日

量より質が重用!被害を減らす捕獲とは?

 イノシシ対策の基本は、隠れ家をなくし、放任果樹などのエサを減らし、防護柵を適切に設置することであると、紹介してきました。正直なところ、これだけでも被害は大きく減ります。ただし、捕獲が必要な場合もあります。今回は「被害を減らすための捕獲」について紹介します。

山の10頭より集落の1頭!

 まず、農作物被害を減らすためには、田畑を荒らしているイノシシ=犯人を捕まえなければなりません。この地域のすべてのイノシシが犯人だ!と思う方もいるかもしれません。実は、農作物へ被害を与えるのは限られたイノシシだけです。

 刑事ドラマで「犯人は現場の近くに潜んでいる」というセリフを聞きますが、イノシシにも同じことが言えます。農地に出て悪さをするイノシシは、その周辺の藪や茂みを生活拠点にしており、山の奥にはほとんど移動しません。逆に、山の奥で生活しているイノシシは、農地に出ることなく暮らしています。ということは、山の奥でたくさん捕獲しても被害は減らないということです。

残念ながら、このことを知らずに、農地から離れた場所や被害がない所で有害捕獲をしている方がいます。イノシシをたくさん捕獲すれば被害が減るというわけではありません。被害を減らすためには、「悪い犯人を捕まえる」ことが重要です。

ウリ坊だけの捕獲は失敗!?

 被害を減らす捕獲では、ウリ坊だけが捕れても成功とは言えません。ウリ坊だけの捕獲は、母親を捕り逃がしたことであり、母親に「捕獲檻にはもう入らない」という学習をさせたことになります。同様に、メスのイノシシは群れで暮らしていることも多いため、メス1頭だけを捕獲した場合も捕り逃しをしている可能性があります。捕り逃しは、捕獲檻に入りにくい厄介なイノシシを作ることになります。捕獲檻にイノシシが入り始めると、早く捕まえたいという気持ちもわかります。しかし、田畑に出没しているイノシシは、警戒心が強くなっており、ただでさえ捕獲が難しいため、焦らずじっくり檻の周辺や中の足跡、自動撮影カメラ等を利用して状況を確認して捕り逃がさないようにしてください。

防護柵の設置が捕獲を助ける!

 皆さんは、「新鮮で美味しい物を売る店」と「賞味期限ぎりぎりの不味そうな店」どちらを選びますか?ほとんどの人が前者を選ぶと思いますが、実はイノシシも同じです。「農地の美味しい物」と「怪しい箱ワナの中の雨で濡れたエサ」とでは、イノシシも大半が前者を選びます。しかし、農地をしっかりと防護柵で囲えば、イノシシはそこで美味しい物を食べられなくなります。そうなると、「田んぼは入れない。しかたない、不味そうでもこっちを食べるか」となり、なかなか捕獲できなかった悪さをするイノシシが捕まり始めます。被害が出るとすぐにでもイノシシを捕獲したくなるでしょうが、農地が無防備のままでは、捕まるものも捕まりません。柵をして田畑に入らせない対策も一緒にしなければなりません。

田んぼの脇にある防護柵の外に設置された捕獲檻の写真

【田んぼを柵で囲い、外に捕獲檻を置く】

柵の脇に設置された餌場の餌を食べる親子のイノシシの写真

【群れで暮らすメスやウリ坊は捕り逃がしのないように】

西日本農業研究センター 研究員 堂山 宗一郎

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