鳥獣被害を防ぐために私たちにできることVol.10

更新日:2020年03月27日

見て、考えるイノシシたち

氷見市の皆様、あけましておめでとうございます。今年もイノシシのことをしっかり知って、素晴らしい農産物を作っていただけると嬉しく思います。今回は、イノシシの目と頭の能力について紹介したいと思います。

想像以上に頭の良いイノシシ

昔からイノシシの被害対策をやってきた地域では、イノシシが賢いことを知っている方も多いと思いますが、最近被害が出てきた地域では、イノシシの頭の良さを甘く見てしまい、痛い目にあう方もいます。

動物の頭の良さを調べる方法の一つに迷路を使った実験があります。私はイノシシの学習能力を調べるために、巨大な迷路に飼っているイノシシを入れる実験を世界で初めてやってみました。するとイノシシは、最初は非常に警戒してなかなか迷路の中を動き回らないものの、慣れてくると試行錯誤を繰り返してエサのあるゴールに辿り着きました。実験を始めて3〜4日後には、スタートからゴールまでの道順をしっかり覚え、迷うことなく餌にたどり着くようになりました。また、ゴールまでの道順を変えても対応する等、ウマよりも良い成績で実験を終え、イノシシが非常に賢い動物であることがわかりました。

このことから言えるのは、イノシシはエサが食べられる場所を覚える能力が高く、防護柵も効果的に設置しなければ農地への道順をイノシシに覚えさせるものになる、ということです。被害が少しだからと油断すれば、イノシシはどんどんと賢くなります。

目で見て確認

 イノシシは嗅覚が優れているため、目はあまり使わないと思っている方もいるはずです。

イノシシの行動を観察していると、エサの場所を発見した時や何か物音がした時、イノシシがその場所へ目を向けてじっくり様子を観察している姿をよく見ます。イノシシを捕獲したことのある方でしたら、檻に入ったイノシシが人間をよく見て警戒している姿を目にしたことがあるのではないでしょうか。このような行動から、イノシシが目をしっかり使い、様々なものを見て生きていることがわかります。

イノシシの視力に関しては科学的な調査がされていませんが、ブタの視力が0.1弱であるため、イノシシも同程度だと考えられます。視力0.1と聞くと、目が悪いと思うでしょうが、新聞や本を読む必要がないイノシシにとって、危険の原因を見つけたり、目の前にある物がエサかどうか判断できる視力があればよく、0.1の視力でもそれが十分可能なのです。

 イノシシの視覚を利用した被害対策としては、田畑の中が見えないように目隠しをする方法があります。イノシシは、先が見えない場所に無理やり侵入しようとはしません。そのため、電気柵の内側やワイヤーメッシュ柵の下側に遮光ネットやトタンを設置することで目隠しの効果を加えることができ、防護効果は上がります。

檻の中で筆者が育てたおすわりをしているイノシシの写真

【筆者が育てたイノシシ。お座りもできる。】

薮の中からこちらを見る一頭の大きなイノシシの写真

【藪の中からこちらを見るイノシシ】

田んぼ脇に設置されたトタンで目隠しをしたワイヤーメッシュ柵の写真

【トタンで目隠しをしたワイヤーメッシュ柵】

西日本農業研究センター 研究員 堂山 宗一郎

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