氷見の漁業

更新日:2020年03月27日

概要

 富山湾は、日本海側のほぼ中央に位置する外洋性内湾です。この湾の特徴として、海底は沿岸部から急勾配に深くなり、水深が1,000メートルから1,200メートルにも達します。海水は、河川等の影響を受けた塩分の低い沿岸表層水、その下層には200~300メートルの厚みを持った対馬暖流の分流が時計回り、あるいは反時計回りに流れ込んでいます。さらに、300メートルより深い部分には、年間を通じて水温1~2℃の日本海固有水(深層水)があります。また、氷見沖の地形は、定置網の一部のようにちょうど能登半島が富山湾から北西部に張出した形になっており、回遊魚を中心とする魚が入り込みやすい漁場が形成されています。 これらの好条件に加え、氷見沿岸部は富山湾で最も大陸棚が発達しています。この大陸棚から一気に湾底まで落ち込む斜面に海底谷(氷見では「ふけ」と呼ばれています。)があり、この海底谷付近はプランクトンを培養する有機塩が豊富で、プランクトンを求めふけ沿いに回遊してくるため、「ふけぎわ」は格好の漁場となっています。 氷見市は、古くから漁業が盛んで、今も数多くの定置網が張り巡らされ、県内漁獲量の3分の1以上を水揚げしている「魚のまち」です。

富山湾の海流の流れを表したイラスト
富山湾の地形図を色で表現したイラスト

定置網の歴史

 氷見地域の「台網(だいあみ)」の起源としては、今から約400年前の慶長19年(1614)に灘浦地先宇波沖沢2番の漁場にクロマグロを捕る夏網が下ろされており、その役銀を記した「慶長十九年分 氷見郡宇波村さわの貮番夏網役銀受取状」(荻野家文書)が、現在富山県内沿岸地先における定置網(台網)の敷設に関する最古の資料として知られています。近世の台網の構造は、魚をとらえる袋状の身網と、回遊してきた魚群を底網のある身網の中に導くために海中に長く垣根のように張り立てられた垣網の二つの部分からなり、共に藁(わら)縄(なわ)で編んでつくられた藁網(わらあみ)でした。江戸時代末期には、身網に従来の藁網のほか、藁網よりも細くて丈夫な麻糸を編んでつくられた麻網(かなあみ)を併用した大規模な「麻苧(あさお)台網(だいあみ)」も敷設されました。 1907年に、当時宮崎県に下ろされて大漁が続いていた新型の「日(ひ)高式(だかしき)大敷網(おおしきあみ)」が灘浦大境沖にはじめて敷設され、大豊漁となりました。この驚異的な鰤の大漁のため、氷見の町は鰤の大洪水に見舞われた、と記されています。そして、翌1908年には富山湾内に25カ統の大敷網が敷設されています。この大敷網は、身網に綿糸網と麻糸網を用い、浮(うき)木材にはそれまでの桐材や杉丸太材にかわって大量の孟宗竹が使われ、おうごや矢引(やびき)など網の構造部には太い藁網ではなく、英国製のロープやワイヤーを使った大規模な網でした。 明治末年から大正初年にかけて、阿尾の上野氏がこの大敷網に改良を加え、一旦網に入った魚群が逃げ出しにくい「上野式(うえのしき)大謀網(だいぼうあみ)」へと改良されました。さらに、大規模で長大な身網をもつこの大謀網の網取り等の操業時間を短縮し、かつ垣網に沿って身網に一旦入った鰤などの魚群の散逸を防ぐため、「のぼり網」を設けるなどの工夫がなされました。身網とのぼり網、角戸(かくと)網(あみ)の三つの部分から構成されるこの網を「落し網」といい、「越中式鰤落し網」とも称されています。 1965年代には魚捕り部の身網台寄りの部分に新たに「のぼり網」を設け、従来の身網の先端部分にやや網目の細かい別の身網を接続した「二重落し網」が考案された。それに伴い、網の素材も改良が図られ、垣網、身網ともそれまでの綿糸網に代えて、軽量で丈夫なナイロンやクレモナなどの化学繊維の網が導入され、網の軽量化により網の敷設と網取りなどの作業に要する時間が短縮され、また労力が軽減化されたために大規模な網の敷設が可能となりました。(『氷見のさかな』1997年氷見市教育委員会発行より)

台網(だいあみ)の構成説明図
大謀網(だいぼうあみ)の構成説明図
越中式落し(えっちゅうしきおとしあみ)の構成説明図

主な漁法

1.定置網

 身網の水深が27メートルより深いものは大型定置網、それより浅いものは小型定置網と分けられます。定置網の構造は、(1)垣網部:魚道を遮断して魚群を囲い網部へ誘導します。(2)囲い網部(角戸、運動場):誘導された魚群を一定の範囲に囲んで行動を制限し更に箱網に誘導します。(3)箱網部(主網、身網):入った魚群を最終的にとり上げる網です。(4)昇り網部:いったん箱網に入った魚群が逃げるのを阻止する網です。などから構成されています。

2.八艘張(八艘張網、敷網)

 海の底に敷いた多角形の網の上に灯りをともして魚を集め、周囲をかこんだ船で網を引き上げ集まってきた魚をとる方法です。主に、イワシ、アジ、ソウダカツオ、カマス、イカ、ニギスをとるために使われます。

3.刺網(指網)

 魚介類の通り道に帯状の網をカーテンのように張り、網の目にひっかけたり、からませたりして魚をつかまえます。刺網は網を水面下で固定する浮き刺網、海底に沈めて固定する底刺網、網を固定しない流し網があります。氷見では漁をする場所によって磯辺の磯刺、沖合いの沖刺の2つを使い分けています。磯刺では、カレイ、クルマエビを、沖網では、ヒラメ、メバル、タラを主にとっています。

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