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木を勧めるのが、大工の仕事 〜「木乃香建築」正力健太郎さん〜(おらっちゃ広報vol.13)

更新日:2017年12月18日このページを印刷する

木乃香建築・正力健太郎さん

木材価格の下落に伴って、国内では林業の担い手が減少し、その結果、人の管理の手を離れた森が増えつつある現在。山には材として活用できる立派な木々がたくさんあるにも関わらず、そのまま放置され、森が荒れてきています。

そんな中、本業の大工仕事に精を出すかたわら、オリジナルのコップやお皿など、デザイン性豊かな木製品を作成し、さらには、市民向けに木工教室を実施するなど、日々、木の魅力を伝え続けているひとりの大工さんがいます。

「木乃香(このか)建築」代表・正力健太郎さん。

大工は、本来、木を勧めるのが仕事。

そのような信念を静かに胸に抱き、やるべきことを一つひとつ。木と人との距離が近い、そんな氷見の未来を夢見ながら歩を進める正力さんのお話に、耳を傾けていきましょう。

木乃香(このか)建築の外観

 

「ちょっと作ってみられ」からはじまった、大工の道。

正力さんの営む「木乃香建築」は、山里の集落・柿谷(かきなや)地区にあります。山を背にし、すぐ前には田んぼ。なんとも静かで、気持ちのいい空間です。作業場には、国産材のスギ板が立てかけられており、周囲には木の香りがふんわりと漂っていました。

このような環境で大工を営む正力さんですが、小さいころの夢は“車屋さん”だったと言います。

「もともと親父がこの土地で大工をしていて、自分の中でも、いずれ継ぐがではないかなと思いつつ、でも車屋さんが夢やった。それから、空調設備の会社に勤めた後、親父に『ちょっと、椅子でも作ってみられ』と言われて。そこで、ものづくりを経験したら、その面白さと木の魅力に気づいて…、目覚めました」

そうして22歳で大工の世界に入り、2013年には独立を果たした正力さん。現在では、北陸の風土に合った木造軸組工法を提案しながら、一般家屋の新築・増改築・リフォーム施工をはじめ、木工家具やお寺さんでの改装工事、幼児向け立体遊具の製作など、非常に幅広い仕事を手掛けています。

加工場で木材を見つめる正力さん
加工場の風景

 

郷里の大工さんの背中から学んだこと。

このように、先代の一言がきっかけで大工の道に入った正力さんですが、仕事を先代から直接習うということは、あまりなかったと言います。

「現場での、親父の仕事ぶりを間近で見たことはほとんどない。でも、この在所(ざいしょ/地域)には、自分が小さいころは大工さんがいっぱいいた。トントンカンカン、近くから盛んに聞こえていた時代だったから、よその大工さんの作業風景は見てましたね」

それは、尺貫法で図面を起こし、木の性質を正しく踏まえて丁寧に墨付けしていく、昔ながらの大工仕事でした。正力さんは当時を振り返りながら、しみじみ話します。

「今の若い世代の大工は、木の墨付けもできん子が多い。木が時とともにどういう風に反っていくのか、わからん子がいっぱいいる。だから自分は、在郷(郷里)の大工でよかったって思ってます。まわりに年配の大工さんがたくさんいて、教えてもらえたから。ほんとによかった」

正力さんは、木の見分け方や伐るタイミングなど、木に関する様々な知恵をこの土地の大工の先輩方から教わってきました。森を見て、木と触れてきた経験の重み。正力さんは、その重みを、しっかりと大切に受け止めているように見えました。

木乃香建築がある柿谷(かきなや)の風景

 

 

木を身近に感じられる、農家レストランをつくりたい。

このように、郷里の大工の知恵を受け継いで、地元で木を扱う仕事に勤しむ正力さん。そんな正力さんには、氷見の森が荒れていくのをただ黙って眺めていることはできませんでした。

子どものころ、自分の身近な遊び場だった地域の山。その山に頻繁に出入りする林業関係の人びとの姿も、いつしか見られなくなっていました。誰かが何かをしないと、先人たちが培ってきた人と森との関係性が、このまま断たれてしまう。

「なんかせんなん」

みんなに山や森ともっと親しんでもらうためには、どうすればいいのだろう。山に木がたくさんあって、昔はそれらを伐り出して家を建てていた。電柱にだって木が使われていた。そんな人の営みと木の供給・消費のサイクルを、もう一度、以前のような循環の輪の中で巡らせていくことはできないものか。

しかし、これは産業構造にも関わることで、すぐに劇的に現状を変えられるというものではありません。
なんとかしなければ…、そんな義務感だけでは、心がいたずらに急くばかり。

夢を語る正力さん

そこで正力さんは、自分の“夢”に、素直に耳を澄ませてみることにしました。

「自分、料理するがいちゃね。それで、作っとるうちに、店ができたらなっていう思いが出てきたが。それで、森の空間を活かしながら、農家レストランを作れたらなって

レストランの建材はもちろん、椅子やテーブル、食器だって、氷見の木材を使いたい。スギやヒノキ以外にも様々な木が、氷見の山にはあるんです。

「いろんな木を活用し、気持ちのよい空間をつくって、まずは多くの人に木の良さを知ってもらいたい。そこからやね」
そう話す正力さんには、焦りの色は見られません。

木のカトラリーづくりの風景

みんなに木を勧めることから、一歩一歩。

正力さんは、2015年から本業のかたわら、氷見市内で木工教室を開いています。これも、無理なくひとつずつ。昨年(2016年)は12月に、中央町にある「まちづくりバンク」で、「木のカトラリーづくり」のワークショップを行いました。

ワークショップで作った木のスプーン

カトラリーとは、食卓で使うナイフやフォーク、スプーンなどのことで、ここでは、あらかじめスプーンの形にくり抜かれたキットが使われ、参加者のみなさんは、楽しそうに木のスプーン作りに挑戦していました。

「これまでは、市街地で木工教室を開いてきたけど、今後は柿谷の作業場とか、まわりに木がたくさんあるような環境の中でもできたらいいかな。まちの子を山につれてきて、思いっきり遊ばせてあげられたら、と」

 

木で作られたコップとお皿

提供:木乃香建築

 

大工の職域を超えて、独自の木工製品を制作しているのも、本業を通じて木の良さを伝えるための取り組みのひとつ。上の写真は、自然の木目を活かして色をつけた木のカップとお皿です。

木材を手にしながら夢を語る正力さん

 

木工ワークショップにオリジナルの木製品、そして農家レストラン。夢を掲げ、しかし、その時どきでできることをしながら、着実に前に進む正力さんの姿勢は、正力さんのこの言葉にもよく表れていました。

「少しずつ少しずつ変わっていけばいいよね。すぐには無理やから。今はとりあえず本業を通して、木を勧めていきたい。少しでもいいから、木のある生活。それが目標かな。そうして、仲間を増やしていければいいなと思っています」

そう、焦らず少しずつ、一歩一歩。

 

 

■「木乃香建築」のホームページは こちらより

■「木乃香建築」のFacebookページは こちらより

■正力さんが登壇した「氷見市ドリームプラン・プレゼンテーション2015」については こちらより

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〒935-8686 富山県氷見市鞍川1060番地  Tel:0766(74)8011 Fax:0766(74)8255 お問い合わせ

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