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地域資源×つながりで創る、魚々サンダル 〜「靴のつるが」釣賀愛さん〜(おらっちゃ広報vol.10)

更新日:2017年12月18日このページを印刷する

靴のつるが・釣賀愛さん

撮影:利波由紀子

 

革製品に使われている動物の皮というと、なにを思い浮かべますか。牛、馬、それともワニ? この氷見には、なんと“フィッシュレザー(魚の皮)”を素材とし、サンダルなど各種アイテムの製品化に挑むひとりの女性がいます。

オーダーメイド靴職人・釣賀愛さん。魚の“皮”をなめして、製品に使える“革”にしたい。そんな若き靴職人の自由な発想から立ち上がった「魚の革製品づくり」のプロジェクトは、新鮮な驚きとともに、多彩で新しい人のつながりを生み出しています。

「靴のつるが」看板

撮影:利波由紀子

靴職人っていう生き方があるんだ。

2004年の開業以来、朝日本町の湊川沿いに佇むアトリエ「靴のつるが」で、“靴に足を合わせるのではなく、足に靴を合わせる靴づくり”をコンセプトに、お客さん一人ひとりと向き合いながら靴を作り続けてきた愛さん。工房には市内外から多くのお客さんが訪れ、いつも順番待ちで、出来上がりまでは10ヶ月から1年はかかるという人気のお店です。

「本当におかげさまで、今日まで続いている。ありがたいよね」と、しみじみと振り返る愛さんですが、靴職人という人生を歩み始めたのは、学生時代に抱いたある憧れがきっかけでした。

アトリエ内の工房

撮影:利波由紀子

 

当時、大阪の短大に通っていた愛さんは、ファッション雑誌で、「ミハラ ヤスヒロ(MIHARA YASUHIRO)」さんというデザイナーを知りました。

「ミハラヤスヒロさんは、そのころ多摩美術大学の学生で、靴職人の仕事を学ぶために浅草に通い、独自に斬新なデザインの靴を作っていました。それが、すごくかっこよかった」

その時に感じた憧れ。ああ、靴職人っていう生き方があるんだ
そして、その“憧れ”は、すぐに「靴職人になりたい」という“夢”に変わっていきました。

工房で靴をつくる愛さん

撮影:利波由紀子

 

そこからの行動は早く、さっそく、京都府八幡市にある靴づくりのカルチャースクールに通い始めます。

「すっごく楽しくて、やっぱり靴づくりをお仕事にしたいって思ったんやけど、プロコースで学ぶには高い学費がかかったんよ。どうしたもんかなと思った時に、弟子入りだったらお金いらんがじゃないかと」

からからと笑いながら、愛さんは続けます。「そうして、弟子を取っているという職人さんを探し当てて、電話したら『来い』って言われた。それが中井松幸(なかいまつゆき)さんというおじいちゃんで、私の師匠」

愛さんが愛着を持って“おじいちゃん”と呼んだ中井さんですが、実は、“履きだおれのまち・神戸”で神戸マイスター認定を受け、さらには、黄綬褒章を受章するほどの“靴の匠(たくみ)”です。そのため、弟子入り希望者も多く、愛さんは、順番がくるまで3年近く待つことになりました。

しかし、その長い待ち時間にも、迷いは生じなかったと言います。靴職人が天職だと感じ取っていたのでしょうかと尋ねてみると、「そうやったんかね〜、不思議なことで」と、愛さんは柔らかく笑います。

そして、3年の修行と、3ヶ月のお礼奉公を終えると、愛さんは、かつて自分が憧れた“靴職人”になっていました。

サンダルの写真

撮影:利波由紀子

 

はじまりは、ふるさとの再発見。

そんな愛さんも、ふるさと・氷見で開業して、はじめの内は仕事をこなすことで精一杯。地域との関わりはほとんどなかったと言います。そんな中、地域の仲間たちと一緒に、氷見の伝統的な暮らしや文化を掘り下げるアートNPOに参加することで、初めてこのまちの姿が見えてきました。

豊かな海や山があり、面白い人たちがいる。「氷見ってすごいやん」

ふるさとを再発見した愛さんは、感動とともに想いを声にします。
「氷見の海でとれる魚の皮を使って、サンダルを作りたい」

魚食のまち・氷見では、水産加工の工程上、必ず魚の皮という副産物が出てきます。そんな魚の皮を、ゴミとして廃棄するのか、それとも、“大切な資源”として活かしていくのか。靴職人として皮革と向き合ってきた愛さんは、後者に夢とワクワクを抱きました。

愛さんのその想いはすぐに仲間たちの心に届き、2015年、魚の皮と使った”魚々(とと)サンダル”づくりに挑む「トトサン」プロジェクトが始まりました。

魚の皮に挑む愛さん

撮影:利波由紀子

 

革づくりへの奮闘と、かたちになった魚の靴たち。

そして、魚の“革”づくりへの挑戦。地域の釣り名人や漁師さん、民宿にお寿司屋さん、鮮魚店など、地域の人たちから海の恵みのおすそ分けを頂きながら、愛さんは“なめし実験”を繰り返していきました。

でも、魚のにおいが抜けなかったり、しなやかな質感が出なかったり・・・。革づくりの第一人者である「川村通商(株)」の鍛治さんや、革の街・墨田区八広にある「都立皮革技術センター」の協力も得ながら試行錯誤を重ね、現在では、ブリ以外の魚の皮ならば自分たちでなめすことができるところまでたどり着きました。

魚々座でのイベントの風景

撮影:浅羽昌二

 

愛さんが完成させた魚の革製品は、サンダルだけではありません。2016年9月から10月末まで「ひみ漁業交流館・魚々座」で行われていた展示会、「纏(まと)うさかな展」では、愛さんが作った魚の革製品として、サンダルに加え、新作3点が紹介されました。

「天馬靴」

撮影:浅羽昌二

フクラギ、シマダイ、タイの革で、木造和船をイメージしたソールを組み合わせて作った「天馬靴」(写真)。繊細なヒラメの革を使用した、初めて歩く幼子のための「ファーストシューズ」。タイの鱗のアクセサリーを足首部分のストラップに飾り、ラグジュアリー感を出した緋色のハイヒールサンダル「エカルラート」。

それぞれが高いデザイン性を持ち、“もろい”、“くさい”、“ヌルヌルする”といった、魚の皮に抱きがちなマイナスの固定観念を心地よく一蹴してくれる、本当に素敵な作品たちでした。

アトリエ前で夢を語る愛さん

撮影:利波由紀子

 

大きな夢も、面白がるのが、はじめの一歩。

このプロジェクトから広がる、大きな夢。魚の革づくり事業を軌道に乗せて、ひとつの産業にまで育てたい。そして、障害のある方やご高齢の方などを含めた、多様な人たちが関われる雇用の場をつくっていきたい。地域にある物件をリノベーションし、工場として活用していきたい。そして、富山県内の職人たちともつながって、新しい商品を開発していきたい。

やりたいことは、いっぱい。それでも愛さんは、力まず笑いながらこう言います。

「ここまで来られたのは、本当にみんなのおかげ。だから、氷見のみんなが、まずは面白がってくれたらいいねえ

そう、面白がるのが、はじめの一歩。まずは気軽に応援したり、一緒に楽しんでみたり。夢とワクワクを共有することから始めてみませんか。

 

 

■「靴のつるが」のFacebookページは こちらより

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