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【物語】”美しい場所”づくりの当事者として、人をつなぎ続けたい 〜「いなかふれさか」上野達也さん〜(おらっちゃ広報vol.17)

更新日:2018年8月23日このページを印刷する

いなかふれさか 上野達也さん

 

国内外を飛び回り、人々に日本や世界各地の美しい場所を見せるという大手旅行会社のサラリーマンという立場から、自分自身がその”美しい場所”づくりの担い手へと大きな転身を決意し、さまざまな挑戦を重ねながら、コツコツと道を切り開いてきた方がいます。

久目地区の触坂でブルーベリー農園と「café 風楽里(カフェふらり)」を営む、“ブルーベリーと山の幸「いなかふれさか」”の上野達也さん。

最近は、久目地区の若者有志で「Qme Clapperz(クメ・クラッパーズ)」を立ち上げ、地域の方や移住してきた人、そして地域外の人たちの交流を促しながら、心と心をつなげていこうと活動を続けています。そんな上野さんの歩んできた道や、これからの展望を伺いました。

たわわに実るブルーベリー

画像提供:café風楽里

 

外の世界を見るために、海外に関わりたかった若いころ。

上野さんは、氷見市触坂に生まれ、身近に里山のある環境で育ちました。高校生の頃までは、地元を“何もない田舎”だと思い、外の世界を見たいと考えていたといいます。そうして、国際公務員や国際NGOでの就職を志すようになり、筑波大学の国際関係学類(現在は国際総合学類)へと進学します。

折しも、上野さんが大学生だった時代は、ドラマ「北の国から」が流行っていたころ。上野さんはドラマだけでなく、脚本家・倉本聰さんのエッセイも読み、「地方の生活にこそ、かけがえのないものがある」という倉本さんのメッセージを、当時から印象深く受け取っていたそうです。農的生活を体験したいと、北海道の酪農家の元で長期の住み込みアルバイトも経験します。

一方で、海外と関わる仕事への憧れも捨てきれず、休学してタイのNGOでの仕事も体験。そして、最終的に就職先として選んだのは、大手旅行会社でした。

「まずは、世の中のお金の流れを把握したいと思って、民間の企業を選んだんです」

旅行会社では、営業、企画、手配、添乗と、一人で何でもこなしました。精力的に働き、日本や世界各地の美しい場所を見て、こう感じたのだといいます。

「京都やパリに人が訪れるのは、パリという場所に人の生活があり、その結果として醸成されてきたものに、魅力が宿っているからだと思います。だから僕も、外の人間として利益を取る側ではなくて、内にいて魅力をつくる側にまわりたいと考えたんです」

そうして旅行会社を辞め、社内結婚した妻・和枝さんが背中を押してくれたこともあって 、地元に戻ったのは、富山を離れてから約10年後、28歳のときでした。

 

久目の農村風景

 

農的生活をめざして飛び込んだ、ブルーベリー農家への道。

新規就農を目指すには、今でこそさまざまな補助金等の助成制度がありますが、当時はそういったサポート体制はまだまだ確立されていなかったといいます。それもそのはず、富山県では上野さんが脱サラ就農者として、2例目。その頃は、新規就農者(非農家)は、県の定めで2年間の研修期間を過ごさなければなりませんでした。

「その2年間で、貯金は無くなりました。ゼロからやるのは困難を極めましたね」

研修の間は、ブルーベリー栽培の先進地である柳田村(現・石川県中能登町)のブルーベリー農家へ、片道90kmの道を週5日通う毎日。そして、研修を終えたのち、当初から観光農業をやりたいという思いがあり、ブルーベリー摘み取り農園をはじめました。

 

風楽里の看板

 

田舎であることを、地元が誇れるように。

屋号である、“ブルーベリーと山の幸「いなかふれさか」”には、上野さんの思いが込められています。“山の幸”には、ここで得られる気持ちのいい時間や風景を楽しんでほしい、という思い。「いなかふれさか」で“いなか”を謳(うた)った のは、田舎であることを地元が誇れるようにしたい、という思いからです。

今でこそ、「café 風楽里」がすっかり有名になり、たくさんの人たちが無農薬栽培のブルーベリーの味覚と 心地よいひと時を求めに触坂を訪れていますが、オープン当初は摘み取り園だけで、カフェはまだありませんでした。

「話題が先行して、園にはいっぱい人が来てくれたんだけど、忙しいのは収穫時期だけで…。ブルーベリーや山うどの苗木も生産していましたが、なかなか、それだけでは難しかったんです」

二人でカフェをつくる構想はもともとあったそうですが、実際にカフェを開こう、と決断したのは、和枝さんでした。生の果実だけを提供するのではなく、ジャムなどの加工品にしたり、カフェの料理として出したりと、ブルーベリーの収穫期以外も販売チャネルを持って、通年でお客さんと接することのできる場を持とう、と考えての舵切りでした。

カフェで提供するパスタのイメージ

画像提供:café風楽里 

 

レアチーズケーキのブルーベリーソースがけ

画像提供:café風楽里 

 

カフェをつくるにあたって考えたのは、「限られた部分を、いかに一次的・二次的・三次的に活用し、多様な価値を生み出していくか」ということ。カフェの建物も、もともとあった納屋を改装したもので、古納屋の良さが生かされた、居心地のよい空間ができあがっています。

「デザインはうちの妻ですが、あのイメージは僕も昔から持っていたものです。参考にした岐阜県高山市の上三之町(かみさんのまち)は、国際観光都市として外国人のお客さんも多く、昔の建物を残してカフェやクレープ屋さんを開いていたりするんです。そこに大学時代から何回も訪れていて。『café 風楽里』は、それが全部融合した形です」

 

風楽里の外観

 

風楽里の内装

 

一年を通して人を迎える場所ができ、“地域の観光”ということを意識しはじめるようになると、上野さんの中で自然と芽生えてきた思いがありました。

それは、この場所に“あるもの”の魅力を伝えていこうということ。

 

ブルーベリーとジャム

画像提供:café風楽里 

 

さらに子どもができて、「地域をどうきれいにするか」「この地域がどうあってほしいか」ということを、より“自分ごと”として考えるようになったのだといいます。

「まず、風楽里の周りを掃除しはじめるところから。ゴミが捨ててあったり、草ぼうぼうだったりしていたのを、自主的に少しずつ。でも、周りの山も荒れていて。それを地権者の方に話を通した上で整備する、なんてこともしていきました」

 

カフェのまわりの掃除からはじめる

カフェを2004年に開業し、それからしばらくは、「地域の中で、果たしてどれだけのことができるのか」と、考え続ける日々を送っていました。カフェやブルーベリー園に小学校や保育園の子どもたちを招待するなど、あれこれと、ひとり知恵を絞ってきたのだといいます。

 

当時の思いを語る上野さん

 

お互いを認め合うところから、心をつなげていきたい。

そんな上野さんにとって、2011年の東日本大震災は一つの人生の節目でした。富山県のボランティア派遣に応募し、6日間だけの被災地での活動でしたが、改めて“ボランティア”の良さに気づきました。

上野さんは、さっそく自ら地元の消防団への入団を志望します。そしてその頃から、PTA会長、主任児童委員 など、“ボランティア”としての役割がどんどん増えていきました。

 

上野さんと久目に移住してきた藤野さん

 

そうして、一生懸命、地域のお役を務めていくなかで、2014年ごろ、久目地区に移住してきた若者たちと出逢います。

その若者の一人が、久目でヤギを飼う藤野弘さん(じーのさん)

「じーのさんたちが来てから、僕も生活の質ががらりと変わりました。前向きになれることをちゃんと言葉にしていけば、物事が動きだすということを、この人たちから教わりました」

そして、上野さんは笑顔で続けます。

「“朝活”を開きたいと言ったら、やりましょう!って。“朝活”はすごく有意義でした。こういった朝のミーティングを通して、定期的にメンバーと会う機会ができたので」

そういった中で誕生したのが、久目地区の若手有志チーム「Qme Clapperz(クメ・クラッパーズ)」でした。“Clap”とは“拍手”のこと。この“拍手”について、上野さんはこう話します。

「最近の人って、拍手しないんですよね。たとえば、学習発表会では、親御さんたちはみんな、カメラやビデオ撮影に夢中。カメラを持っていない人も、拍手しない。それは、ひとえに、みんなでこの場を盛り上げようという気持ちが乏しいということの表れだと思うんです」

そして、上野さんは続けます。
「この“拍手”という行為を、僕らはまだ十分に学べていないのだと思います。目の前にいる人、そこにある場全体に対して“尊敬や感謝の念”を持って手を叩く。いわば、“拍手”というのは、人と人とをつなぐための一つの知恵だと思うのですが、それが継承されていない。とても、もったいないことですよね」

相手を尊重することからはじまる、肯定感に満ちたコミュニケーション。
その象徴が、心からのあたたかい“Clap(拍手)”。

この「Qme Clapperz」は地域内外の交流を促す存在として、市民農園や学習支援、地区全体でのイベント実施など、さまざまに構想をふくらませています。そんな大きく広がる夢に対して、必要な応援はありますかと上野さんに伺うと、次のような答えが返ってきました。

「久目地区の新住人を増やしたいという思いがあるので、久目に住んでくれたら嬉しいのですが、そうでなくても、定期的に久目に訪れて活動するとか、ちょっと企画や運営に関わってみたいというのも歓迎。単純に楽しそうだから、というので参加してもらうのも大歓迎です

さらに、上野さんは言葉を継ぎます。
「自分たちが今、生きている場所、一緒に過ごしている人。そういったものとの“つながり”を大切にしていきたい人は、ぜひ関わってもらいたいと思います」

─僕の役割は、“人と人とをつなぐこと”。

そんなふうに、自分の役割を見定めた上野さんの言葉は、どこまでも力強いものでした。あなたも、そんな上野さんたちと“つながり”を持って、活動の楽しさを共有してみませんか。

 

 

■「café風楽里」のホームページは こちらより

■「café風楽里」のFacebookページは こちらより

 

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